
障害年金の「事後重症請求」とは?障害認定日に該当しなくても受給できる仕組みを解説
障害年金は、原則として「障害認定日」の時点で一定の障害状態にあることが求められます。では、障害認定日の時点ではそこまで症状が重くなかったけれど、その後だんだん悪くなってきた――という場合はどうなるのでしょうか。
実は、障害認定日に障害等級に該当しなかった方でも、その後に症状が悪化し、障害等級に該当する状態になったときには障害年金を請求できます。これが「事後重症による請求(事後重症請求)」と呼ばれる仕組みです。
このコラムでは、事後重症請求の基本的な仕組み、通常の請求との違い、知っておきたい注意点を解説します。
まず「障害認定日」をおさらい
事後重症請求を理解するには、まず「障害認定日」の仕組みを知っておく必要があります。
障害認定日とは、障害の程度を認定する基準の日のことです。原則として、初診日(障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日)から1年6か月を経過した日です。
通常の障害年金請求では、この障害認定日の時点で障害等級に該当していることが求められます。該当していれば、障害認定日の翌月分からさかのぼって年金を受け取れます(ただし時効があるため、さかのぼれるのは最大5年分です)。
では、障害認定日の時点ではまだ症状が軽かった場合はどうなるのか。ここで登場するのが事後重症請求です。
事後重症請求の仕組み
事後重症請求とは、次のようなケースで使える請求方法です。
障害認定日の時点では、障害等級に該当する状態ではなかった
しかし、その後に症状が悪化した
悪化した結果、障害等級に該当する状態になった
このとき、現在の状態をもとに障害年金を請求できるのが事後重症請求です。
具体例で見てみましょう
たとえば、こんなケースを考えてみてください。
30歳のときにうつ病で初めて心療内科を受診した方がいました。初診日から1年6か月後(31歳半頃)が障害認定日ですが、その時点では通院しながらもなんとか仕事を続けていて、障害等級に該当するほどの状態ではありませんでした。
ところが35歳になって症状が悪化し、仕事を続けることが難しくなり、日常生活にも大きな支障が出るようになりました。
この場合、35歳の時点で障害等級に該当する状態にあれば、事後重症請求によって障害年金を受け取れる可能性があります。
受給開始はいつから?
ここが事後重症請求の大きなポイントです。
通常の障害認定日請求では、障害認定日の翌月分からさかのぼって年金が支給されます。しかし、事後重症請求の場合は請求書を提出した日の翌月分からの支給になります。
つまり、過去にさかのぼって受け取ることはできません。
先ほどの例でいうと、35歳で症状が悪化しても、実際に請求書を提出したのが37歳だった場合、37歳の請求月の翌月分からの支給になります。35歳〜37歳の間の年金は受け取れません。
このため、事後重症請求では請求のタイミングが受給額に直結するということになります。
事後重症請求の3つの条件
事後重症請求を行うには、次の3つの条件を満たしている必要があります。
条件1:初診日が確認できること
通常の障害年金請求と同じく、初診日を確認できる必要があります。初診日によって、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを請求するかが決まります。
条件2:保険料納付要件を満たしていること
初診日の前日時点で、保険料の納付要件を満たしている必要があります。これも通常の請求と同じです。
20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われません。
条件3:65歳の誕生日の前々日までに請求すること
事後重症請求には年齢の期限があります。請求書を65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。
この期限を過ぎてしまうと、事後重症請求はできなくなります。「いつか請求しよう」と思っているうちに65歳を過ぎてしまった、というケースもあるため注意が必要です。
なぜ「前々日」なのかというと、法律上「65歳に達する日」は65歳の誕生日の前日を指すためです。事後重症請求はその前日まで(=誕生日の前々日まで)に行う必要があります。
事後重症請求でよくある勘違い
「障害認定日に該当しなかったから、もう請求できない」
これは誤解です。障害認定日に該当しなくても、その後に状態が悪化すれば事後重症請求が可能です。障害認定日の結果だけであきらめる必要はありません。
「過去の分もさかのぼってもらえる」
事後重症請求の場合、年金は請求日の翌月分からの支給です。障害認定日請求のようにさかのぼって受け取ることはできません。だからこそ、該当する状態になったら早めに動くことが大切です。
「障害認定日請求と事後重症請求は、どちらか一方しかできない」
実は、障害認定日請求と事後重症請求を同時に行うことも可能です。障害認定日時点の診断書と、現在の診断書の両方を用意して提出するケースもあります。障害認定日請求が認められればさかのぼって受給でき、認められなくても事後重症請求として審査されることがあります。
事後重症請求で大切なこと
事後重症請求のポイントは、大きく2つです。
1つ目は、請求が遅くなるほど受給開始が遅れるということ。
さかのぼりができないため、「該当するかもしれない」と感じたら早めに動くことが受給額に直結します。
2つ目は、65歳の期限があるということ。
この期限を過ぎると事後重症請求そのものができなくなります。特に、障害認定日から長い年月が経っている場合は、年齢の確認を忘れないようにしましょう。
障害年金の仕組みは複雑に感じるかもしれませんが、事後重症請求は「障害認定日に該当しなかった方にも開かれた道」です。症状が重くなってきたと感じたら、まず自分の初診日や保険料の納付状況を確認するところから始めてみてください。